109:2015/07/14(火) 20:19:31.49 ID:
また暑い季節がやって来た。異常なまでに蒸し暑かった夏の夜に体験した恐怖の出来事は今でも忘れない。

あの日…繁忙期に入り、俺は夜遅くまで事務処理に没頭する毎日を送っていた。
ふと時計を見ると既に23時を回っている。書類に判子を押し既決トレイに入れ、溜息をついた。
俺は背凭れに身を預け大きく背伸びをし、おもむろに煙草を咥え、お気に入りのターボライターを取り出す。
「キンッ」響きの良い音を立てて蓋が開き煙草に火を点け、煙を吸い込み一呼吸置いて煙を吐き出す。
立ち昇っていく行く煙草の煙を見つめながら、「今日はもう止めだ。」と呟き
携帯を取り出し、愛する妻に帰宅する旨と先に寝るよう連絡をし、席を立った。
戸締りをし、照明を落とし事務所を後にした。
裏口の扉を開いた途端、凄まじい熱気に晒される。
俺は急いで車に乗り込みエンジンをかけ、エアコンを点け車を出し帰途についた。
「今日はいつも以上に蒸し暑い夜だ。」などと呟き、静まり返った深夜のオフィス街を抜ける。

郊外に出たところで山越えにはなるが、近道のルートを選んだ。
時間が時間なだけに対向車は全く無く、ところどころに街路灯が点いているだけだが
整備が行き届いており走り易い。





続きます。