【彼女との話】「早く結婚してくれ」 従姉に恋をした。信じられないほど心が痛い。彼女に会ってから今日まで、一年一年、一日一日、その痛みは蓄積されていき、今は極限だと思う

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:2005/11/17(木) 05:02:47 ID:
続きです。
ようやく昨日から仕事が休みになりました。
しかし不規則な生活が身に染み込んでいるため、
アップするのはやはりこんな時間になってしまいます。
週末まで束の間の休みですが、
出来るところまでがんばります。

支援してくださっている方、ありがとうございます。
何回でもお礼が言いたいです。

    112:2005/11/17(木) 05:04:06 ID:
    それから一週間後。
    俺は親父に電話し、食事に誘い出した。
    すでに転勤のことは話していたので、やけに親父が寂しそうに見えた。
    特に話すこともなかったのだが、なんだか別れ難かった。
    親父はこれからの俺の生活に、
    ただ「がんばれ、がんばれ」とだけ言い続けた。

    別れ際、親父が祝儀袋を俺の手に握らせた。
    掴んだだけで中身の厚さがわかった。
    当時、親父は長年勤めていた建設会社を辞め、フリーの大工(変な言い方だが)として
    全国を駆け回っていた。何人か若い人間も雇っていた。決して生活は楽じゃなかっただろう。
    俺は黙って受け取った。


    113:2005/11/17(木) 05:05:26 ID:
    転勤2日前、会社の同僚や上司、取引先の人たちが壮行会を開いてくれた。

    会には50人もの人たちが出席してくれ、俺はひとりひとりへの挨拶に追われた。
    一通り挨拶も終わった頃、俺は皆の目を盗んで店の外に出、タバコに火をつけた。
    そこへ女性がひとり近づいてきた。
    取引先の秘書、野田 芽衣子さんだった。
    取引先の窓口だった彼女とは仕事での付き合いも深く、また会社同士の飲み会でも
    よく顔を合わせていた。

    「大変ですね」
    「ええ。でもこれが最後だから」
    「この後、2次会も行くんですか?」
    「アイツら(同僚)帰してくれませんよ(笑)」
    「私もお邪魔していいですか?」
    「もちろん。アイツら喜びますよ」

    彼女はウチの会社でも評判の美人で、内外問わず狙っている者も多かった。
    それに大抵彼女は、こういった会では一次会だけで帰ってしまう人だったので、
    彼女の参加表明に俺は満更でもなかった。


    114:2005/11/17(木) 05:07:04 ID:
    2次会は同僚や取引先の若手だけでカラオケに行くことになった。
    飲み会などでの俺はいつも盛り上げ役に徹していたので、この時も俺はカラオケ部屋を
    縦横に走り回ってはしゃぎまくった。

    小一時間も経った頃、さすがに疲れて端っこの席に座り込んだ俺の隣に、芽衣子さんが
    移動してきた。手にはジンライムのグラスを持っていた。それを「はい」と俺に渡す。

    「ああ、ありがたい。喉カラカラでした」
    「少しゆっくりしたらいいじゃないですか」
    「最後だと思うとどうにも落ち着かなくて。性格ですね」
    「あんまり最後、最後って言わないでください」

    いつもはおっとり喋る彼女の口調が変わった。

    「今日は…今日ぐらいはちゃんとお話したいです」


    115:2005/11/17(木) 05:07:53 ID:
    一瞬ぼーっとなったが、俺はすぐに我に返って芽衣子さんを部屋の外に連れ出した。

    「あの…俺と付き合いませんか?」
    我ながらあまりにも唐突であっさりだったと思う。
    でもこの雰囲気は…そういうことなんじゃないかと思った。

    「はい」
    彼女の返事もあっさりだった。


    116:2005/11/17(木) 05:10:15 ID:
    明くる日、とうとうこの土地での最後の日を迎えた。

    別に感慨深いとかそういうのはなく、それよりも昨晩の芽衣子さんとのことが気に掛かった。

    (俺…付き合おうって言ったんだよな?)

    彼女の「はい」という返事も憶えていたが、なんだか夢見心地で自信が持てない。
    昨日は結局3次会まで行ってしまったし、俺も相当に酔ってしまった。
    芽衣子さんも最後まで付き合ってくれていたが、ベロンベロンになってた俺は
    携帯番号やメアドすら聞かず、彼女を送ることさえしていなかった。

    午後、俺は芽衣子さんの会社に電話した。

    「あの、もしもし大塚です。昨日は…」
    「あ、ごめんなさい。今取り込み中なのでまた連絡します」

    ええええええーっ!?やっぱアレ夢だったんか!?!?

    30分後、会社にFAXがきた。芽衣子さんからだった。

    「憶えててくれたんですね。よかったー!
     私、夢でも見てたのかと思って心配してたんです。
     携帯番号とアドレス書いておきます。後で連絡ください。
     最後のお仕事、がんばってくださいね!!    芽衣子」

    ほっとして、彼女の字がいとおしくなった。
    始まりこそなんであれ、芽衣子さんはきっと俺の大切な人になると思った。


    117:2005/11/17(木) 05:11:49 ID:
    その日は残務整理だけだったので早目に会社を出た。
    すぐに芽衣子さんの携帯に電話する。

    (あ、いけね。彼女はまだ仕事中じゃないか)

    あわてて切ろうとしたら芽衣子さんが出た。

    「ごめんね。仕事中だったよね」
    「いえいえ(笑)大塚さんは?」
    「もうおしまい。会社出たところ」
    「じゃあ…」
    彼女の声が小声になった。
    「私、早退しますね。ちょっと待っててください」
    「あ、ちょっ、ちょっと!」

    電話が切れた。


    118:2005/11/17(木) 05:12:57 ID:
    30分後、喫茶店で芽衣子さんと会った。

    「そんな無理することないのに…」
    「いいえ!いいんです(笑)」

    笑顔が可愛かった。

    それから2時間あまり、色々なことを喋った。
    これまで仕事上か飲み会でしか話す機会がなかったから新鮮だった。
    俺は気になっていたことを聞いた。

    「昨日は突然あんなこと言って…びっくりしたでしょ?」
    「はい(笑)でも私も告白するつもりだったんです」
    「そ、そうなの?」
    「ええ(笑)でも大塚さん、みんなに囲まれててなかなかふたりになれなかったからもどかしかったです」

    恥ずかしそうにしている彼女がなんとも可愛い。久しぶりの感情だった。


    119:2005/11/17(木) 05:14:04 ID:
    すでに家財道具は引越先に送っていたので、この日は太田家で最後の夜を過ごすことになっていた。
    でも芽衣子さんともう少し一緒にいたい。彼女が俺の心を見透かすように言った。

    「今日はもうお家に帰ってあげてください。これからも一緒でしょ?私たち」

    たまらなくなって、彼女の手を握った。

    「明日、見送りに行きますね」

    彼女が握り返してきた。


    120:2005/11/17(木) 05:15:01 ID:
    翌朝、俺はお父さんの車に乗って駅に向かった。母たちも一緒だ。
    と、お父さんの携帯に電話が掛かってきた。
    お父さんの話しぶりで相手が誰だかわかった。

    「恵子ちゃん…ですね」
    「うん。これから健吾君の見送りに来るって」

    芽衣子さんとの待ち合わせの時間までにはまだ間がある。
    それに…大丈夫。俺にはもう芽衣子さんがいる。

    すでに駅に着いていた恵子ちゃんと合流し、みんなで喫茶店に入った。
    いつもだったらすぐに馬鹿騒ぎになる彼らも、この時は口数が少なかった。
    笑顔で餞別をくれる彼ら。
    その気持ちが伝わってきて、俺は胸がいっぱいになった。


    121:2005/11/17(木) 05:16:21 ID:
    ふと喫茶店の窓がコンコンと鳴った。

    !!

    振り向くと芽衣子さんが笑顔で立っていた。
    芽衣子さん、早い。

    「だれ~?」
    母や義妹が冷やかしの視線を向ける。
    「ん。今付き合ってる人」
    「ひゅーひゅー」
    義弟も冷やかす。古い表現だなオイ。

    お父さんが窓越しに「おいでおいで」と芽衣子さんを手招いた。
    小走りに芽衣子さんが店に入ってきた。
    芽衣子さんをみんなに紹介し、みんなを芽衣子さんに紹介した。
    さすがに一昨日から付き合い始めたとは言えなかった。

    少しの間、芽衣子さんを交えて話をした。

    「それじゃ、お邪魔にならない内に我々は帰りますか。元気でね、健吾君!」

    恵子ちゃんが笑顔で俺の腕を叩いた。


    122:2005/11/17(木) 05:17:22 ID:
    新幹線の発車時刻まではまだ時間があった。
    俺と芽衣子さんはホームのベンチで手を繋ぎながら話をした。

    「なるべくマメに帰ってくるよ」
    「無理しないでね。遠距離だからって気負わないで。私は大丈夫!」

    もっと早くこんな展開になってたらなぁ。行きたくないな、東京。

    新幹線がホームに入ってきた。
    手を放し、デッキから芽衣子さんを見つめる。
    芽衣子さんが何か言いたそうにしていた。俺も…したかった。

    ドアが閉まった。
    俺はおどけて、窓越しに芽衣子さんに投げキッスを贈った。

    ホントにやりゃよかったのに。馬鹿。


    123:2005/11/17(木) 05:18:39 ID:
    職場は東京だったが、俺は住まいを横浜に決めていた。
    田舎モノの俺にいきなり東京暮らしはハードルが高いとビビッていたのと、
    俺の生まれは川崎市だったので生まれ故郷に近いところを選んだからだ。
    しかし横浜もとんでもなく都会だった。

    新しい職場での仕事は思ったよりもすんなりと入っていけた。
    順調な滑り出しに心に余裕が持てた俺は、暇を見つけては色々な場所へと出かけ、
    遊び、観て、食べた。


    124:2005/11/17(木) 05:20:10 ID:
    そして東京に来て2週間後、俺は芽衣子さんに会いに地元に帰った。
    さすがに早っ!とは思ったが、遠距離恋愛なんて初めての経験だったし、
    こういうことは男側が努力しなければいけないと思っていた。
    なにより芽衣子さんに会いたい。なんの苦もなかった。

    芽衣子さんはホームまで出迎えに来ていた。

    降り立った俺に芽衣子さんが抱きついてきた。
    背の高い彼女の顎が俺の肩に乗っている。俺は彼女の頭を撫でた。

    あの早退の時もそうだが、芽衣子さんは俺が思っていた以上に積極的で行動派だった。
    付き合い始めてから知る相手の意外な一面というものは良いことも悪いこともあるが、
    芽衣子さんのそれは俺を喜ばせることばかりだった。


    125:2005/11/17(木) 05:21:08 ID:
    楽しすぎたデートはほんの一瞬に感じた。
    帰りもまた、彼女はホームまで一緒に来てくれた。
    朝から今まで、ずっとふたりは喋り続けていたが、
    新幹線がホームに入ってくると彼女は黙りこんでしまった。

    はぁ、行くか…と、ベンチを立つ俺の手を彼女が放さない。
    座ったまま、芽衣子さんがじっと俺を見る。

    上目遣いをする女性は確信犯だと思う。
    俺は彼女の顔に俺の顔を重ねた。

    それからも俺は2週間置きに芽衣子さんに会いに行った。
    いつのまにかクリスマスがまた近づいていた。


    126:2005/11/17(木) 05:22:25 ID:
    クリスマス・イブ。

    彼女がいない時の俺は
    「ヘン!俄かクリスチャンどもめ!!」
    と街行くカップルを妬ましく見つめるが、芽衣子さんがいる今は
    「なんて素敵な日なんでしょう」
    と穏やかな心でいる。

    (単純だなぁ)

    新幹線の中で苦笑しながら、彼女へのプレゼントが入ったカバンを一撫でした。


    127:2005/11/17(木) 05:24:05 ID:
    いつものようにホームまで出迎えにきていた彼女の手をとり、街へと連れ出す。
    昼食をとり、映画を観て、お揃いの来年の手帳を買った。

    すっかり陽も落ち、街路樹を覆っているイルミネーションがライトアップされた。
    抜かりなく予約しておいた店に彼女をエスコート。前菜が出た時、買っておいたプレゼントを
    彼女に渡した。指輪。今思えば恥ずかしいほど定番のクリスマスを演出していたが、
    舞い上がっていた俺にそんな意識はない。

    彼女からのプレゼントはライターだった。高価なブランド物だ。裏に文字が彫ってあった。

    “Do not smoke too much”(吸い過ぎないでね)

    「ライターをプレゼントしといてなんだけど…」
    恥ずかしそうに俯く彼女。可愛い人だよ、ほんと。

    デザートを食べている時、彼女が言った。

    「今日は帰らないよね?」

    照れたが「うん」と頷いた。

    彼女も照れながら微笑んだ。


    128:2005/11/17(木) 05:25:16 ID:
    初めて彼女と朝を迎える。もちろん緊張しっぱなしだった。

    キラキラした並木道をホテルに向かって歩いていた時、彼女が立ち止まり、ベンチに腰掛けた。
    もう少しイルミネーションを見てるのもいい。俺も隣に座った。
    彼女がじっと俺を見ながら言った。

    「あのね、健吾君に聞きたいことがあるの」
    「ん?」
    「健吾君、好きな人がいるでしょ?」




    へっ?

    予期しない言葉に俺はうろたえた。

    「い、いるよ。芽衣子さん」なんとか取り繕う。


    129:2005/11/17(木) 05:27:10 ID:
    しかし俺の一瞬の動揺を彼女は見逃してくれなかった。

    「…今の健吾君の顔ではっきりしちゃった…」

    何が起きてるんだ、今。彼女は何を言ってるんだ。
    しかし更に彼女が言った一言が、俺をより混乱に陥れた。

    「あの従姉の人じゃない?健吾君の好きな人」

    もう何がなんだか。

    俺は彼女の次の言葉を待つしかなかった。

    「見送りに行った時感じたの。あの人に対する健吾君の態度が違う気がしたの。
     何が、というのはうまく言えないけど。あと、目。あの時あの人を見る健吾君の目。
     今、私を見る目と同じだった」

    そんな馬鹿な。
    あんなちょっとの時間で、芽衣子さんは俺の気持ちがわかったと?
    いや、現に当たっているけど、でも、今は!


    130:2005/11/17(木) 05:28:06 ID:
    俺は芽衣子さんと付き合うことになった日までのことを正直に話した。
    芽衣子さんは黙って聞いてくれた。
    冗談じゃない。あれは終わったことなんだ。俺の気持ちはもう…。
    俺は懸命になって芽衣子さんに説明した。
    なんてこと言うんだ。やめてくれ。たのむよ。

    全てぶちまけた俺を見て、芽衣子さんが言った。

    「ごめん。今日は帰らせて」

    俺は彼女を引き止められなかった。


    140:2005/11/17(木) 21:29:56 ID:
    漏れは1◆さんの偽者です

    1◆さん
    こんな簡単な言葉をトリに使っちゃ駄目だよ
    他スレで試したら簡単に再現できた
    もう使わないけど1◆さんもトリ変更したほうがいい
    漏れもここ支援したいからあえて忠告させてもらう
    荒らすつもりはないので勘弁してくれ


    141:2005/11/18(金) 08:24:46 ID:
    続きです。

    >>140
    びっくりしました。
    トリップはおぼえたてで、私の勉強不足だとは思うのですが、
    そんなに簡単に中の言葉がわかるものなのでしょうか?
    ご忠告どおり新しいトリップにします。
    ありがとうございました。

    ここを読んでくださっている方々、
    私は2チャンネルにあまり慣れていません。
    一応、書く前に注意事項等を読みましたが、
    この掲示板の独自のルールや、
    してはいけないことなどがありましたら、
    どうか教えてください。

    勉強不足で申し訳ありません。


    142:2005/11/18(金) 08:26:50 ID:
    家まで送るという俺の申し出は断られた。
    突然ひとりぼっちになった俺は、頭の整理がつかないまま、
    今夜泊まる予定になっていたホテルへと向かった。

    「お連れ様は?」フロント係りが憎たらしい。
    「…後から来ます」

    さっさとキーを受け取り、部屋へ。

    広いなぁ、ダブルって。

    一ヶ月前、知り合いのコネを使って無理してとったこの部屋も、今は何の意味もない。
    だったら泊まらなければよかったのだが、知り合いの顔を潰すわけにはいかなかった。
    眼下にはさっきのベンチが見えた。こんなに惨めなクリスマスは初めてだ。

    ルームサービスで頼んだワインボトルを空けた時、
    フラフラに酔った俺は我慢できなくなって芽衣子さんに電話した。

    出ない。

    諦めて切った5分後、芽衣子さんからメールがきた。

    「まだ冷静になれません。ごめんなさい。明日連絡します」

    携帯を投げつけ、俺は寝た。


    143:2005/11/18(金) 08:28:08 ID:
    翌朝、フロント係りの顔を見ないようにしながら清算を済ませ、俺はホテルを後にした。
    外は快晴。幸せな夜を過ごしたであろうカップルたちが、楽しげに歩いている。
    気が滅入る。本当なら俺も仲間だったのに。

    ファーストフードの店に入り、俺は芽衣子さんからの連絡を待った。
    俺も芽衣子さんも今日は休みをとっていたから、連絡は必ずくる。
    そう信じ、俺は携帯と芽衣子さんからもらったライターを両手に握り締めた。


    144:2005/11/18(金) 08:29:35 ID:
    一時間後、芽衣子さんからメールがきた。

    「電話だと冷静に話せないと思うのでメールで許してください。
     昨日は本当にごめんなさい。健吾君の気持ちを台無しにしてしまったと反省しています。
     でもずっと気になっていたんです。あの従姉さんのこと。
     あの日は健吾君の目が何を意味しているのかわかっていませんでした。
     でも付き合っていくうちに私を見る健吾君の目があの日と同じ目になっていると感じてきました。
     健吾君の目は優しくて、私を大切に想ってくれていることが伝わってきました。うれしかったです。
     でも同時に、私は従姉さんに対して嫉妬するようになりました」


    145:2005/11/18(金) 08:31:08 ID:
    すぐに2つ目のメールがきた。

    「私は自分でも嫌になるほど独占欲の強い人間です。
     健吾君が100%、私だけを見てくれていると思えなければ安心できないのです。
     健吾君は昨日、もう従姉さんに気持ちはないと言っていたけど、私はどうしても疑ってしまいます。
     健吾君はあの人とは付き合ったわけじゃないし、何もなかったという言葉も信じているけど、
     でもだからこそ、まだ未練がありませんか?
     今、健吾君があの人を見る目と、私を見る目が同じかどうかはわかりません。
     私は健吾君が大好きです。
     だから、本当の健吾君の気持ちを教えてください」


    146:2005/11/18(金) 08:32:26 ID:
    ため息が出た。何なんだよ一体。

    恵子ちゃんを見る目と芽衣子さんを見る目が同じ?
    そんなこと俺にはわからない。自覚無い。
    ただ恵子ちゃんを見るといつも辛かっただけだ。
    でも芽衣子さんを見るといつも暖かい気持ちになれたんだよ?

    確かに芽衣子さんとは受身で始まったし、
    その時の俺の心の中にはまだ恵子ちゃんへの想いが残っていたとは思う。
    でも今の俺は君との「これから」ばかりを考えてる。
    付き合っていけばそれはもっともっと大きくなって、
    いつか恵子ちゃんは俺の心からいなくなる。
    そのためにも君に側にいてほしい。
    それじゃダメなのか?
    勝手な言い分なのか?

    俺は店を出てひと気の少ない公園に行った。
    そして芽衣子さんに電話をしてありのままの気持ちを伝えた。

    芽衣子さんは言った。
    「少し時間が欲しい」

    もう何だかわからなくなった俺は、東京行きの新幹線に飛び乗った。


    147:2005/11/18(金) 08:34:08 ID:
    一週間が過ぎた。大晦日。今日は俺の誕生日だ。

    俺の仕事は365日、平日と休日の別ない仕事だったが、
    転勤してまもないということで職場の先輩が気を遣ってくれ、
    この年末年始はまるまる休みとなっていた。
    しかしその休みも今は恨めしい。

    この間、俺は芽衣子さんに連絡をしなかった。
    彼女からも一切連絡はなかった。

    夜も昼も、芽衣子さんに言われたことをひとつひとつ考えてみた。

    彼女の言うとおり、恵子ちゃんへの想いが顔に出ていたのだろうか。

    感情が顔に現れやすい人間だと、自覚はしていた。
    怒れば口がとんがり、嬉しければ目尻が下がりっぱなしになる。
    しかしそれがこんな結果を招くとは。

    なんだかなぁ。このまま年越しかよぉ…。


    148:2005/11/18(金) 08:35:27 ID:
    そうやって腐っていたら、午後、宅急便が届いた。
    芽衣子さんからだった。

    中にはマフラーと手紙が入っていた。
    一呼吸して手紙を開ける。

    「誕生日おめでとう。
     編み方を勉強する時間がなかったので、マフラーは買ってきたものです。
     でも一生懸命選びました。よかったら使ってね。

     大切な日なのに健吾君の横にいられなくて残念です。

     健吾君が私に側にいてほしいと言った言葉。
     うれしかったけど、私には無理です。
     健吾君が忘れようと努力すればするほど、
     きっと私の従姉さんへの嫉妬心は大きくなります。
     そして嫌な姿をいっぱい健吾君に見せてしまう。私はそれが怖いのです。

     勝手な言い分ですが、健吾君が従姉さんを忘れられる日まで、
     距離を置いて待っていてはダメですか?

     来年は手編みのものをプレゼントしたいです。        芽衣子」


    149:2005/11/18(金) 08:36:29 ID:
    読み終えた俺の頭に疑問が湧いた。

    芽衣子さんがまだ俺を想ってくれているのはわかった。
    独占欲というコンプレックスがあって、嫌な姿を俺に見せたくないという気持ちも理解できる。
    過去に何かあったのかな。そんな姿は見たことなかったから相当抑えていたのだろう。
    気づいてやれなかった俺が鈍感だったんだ。

    でもね芽衣子さん。

    俺が恵子ちゃんのことを完全に忘れたと、誰が、どう判断するの?

    君の勘が鋭いことはよくわかった。
    俺が口先だけで「忘れた」と言ってもすぐに看破されるだろうことも。

    かと言って本当に忘れたとしても、そのことは君に伝わるのだろうか?
    君の勘は、それを受け入れてくれるのかい?

    2002年も笑顔で終われなかった。


    150:2005/11/18(金) 08:37:32 ID:
    年が明けても、相変わらず俺は悶々としていた。

    (一生の間に、俺は何回「悶々」とするんだろう)

    笑いたくなった。

    どうしてよいものかわからなかったから、芽衣子さんへの連絡はずっと出来ないでいた。
    この頃の俺は仕事も忙しくて精神的にも参っていた。
    追い詰められた心と頭が、芽衣子さんへの不満を生み出す。

    忘れようが忘れまいが、今の俺たちには一緒にいることこそ必要なんじゃないの?
    芽衣子さんは考えすぎだ!

    …自分こそ、いつも理屈で恋愛を考えていたくせに。


    151:2005/11/18(金) 08:39:37 ID:
    その頃、俺は会社の女の子とよく飲みに行っていた。
    そのコ・新藤 明日香さんは別の会社から俺の職場に出向していた人で、
    同じ部署の仕事仲間だった。
    仕事も優秀で、サバサバとした性格は付き合いやすく、
    また住まいも俺と同じ横浜だったので、よく帰りがけに一杯やった。
    男女ふたりが飲みに…とは言っても話す内容はいつも仕事のことばかりで
    色気のある会話は別段無かった。

    しかし回数を経るごとに彼女の態度が変わってきた。

    俺に気があるような態度、仕草が目立ってきた。
    俺も芽衣子さんと膠着状態にあったので、そんな彼女のアプローチを甘受した。
    だが決定的な言葉は言わせず、言わずのノラリクラリ。
    芽衣子さんの存在も新藤さんには言わなかった。

    いい気になっていた。

    今思い出すに、実にいやらしいヤツだったと思う。


    152:2005/11/18(金) 08:40:21 ID:
    2月に入ってまもなく、仕事中、新藤さんが俺に小声で言った。

    「来週の金曜日、帰りに食事しません?」

    その日はバレンタイン・デー。

    「大塚さんに予定がなければですけど…」

    俺はOKした。


    153:2005/11/18(金) 08:41:30 ID:
    バレンタイン・デー当日。
    会社から少し離れた喫茶店で待ち合わせした俺と新藤さんは、
    地元のほうが終電を気にしなくていいからと、横浜に移動した。

    「明日はふたりともお休みだから、朝まで飲みましょうね(笑)」

    丁度いいウサ晴らしになると、俺も「望むところさ~」と軽く返した。

    彼女のお気に入りだという店に案内された。
    店内はカップルだらけ。

    ここに来て突然、俺は自分に動揺した。

    なにしてんだ俺!? いや、なにしようとしてんだよ、俺!?

    乾杯の後、新藤さんがチョコの包みを出しながら言った。

    「付き合ってくれますか?」

    その言葉を遮るかのように俺は言った。慌てふためいていた。

    「ごめん新藤さん、ごめん!
     ここまで来ておいて、こんなこと言うのはおかしいし矛盾してるけど、
     ごめん、俺、付き合っている人、いるんです!ごめんなさい!」

    ワッ、と彼女が泣き出した。


    154:2005/11/18(金) 08:42:39 ID:
    もう俺の視線は彼女に釘付けで、周囲の視線は感じたけれど、
    それを恥ずかしがる余裕など全く無かった。
    彼女は言葉もなく泣き続ける。
    自分のしたことに居た堪れなかった。

    ようやく彼女が泣き終えた顔を上げた。
    俺はひたすら謝った。ごめんと言うばかりで他の言葉は浮かばない。
    彼女が言った。

    「いいんです、いいんです…言ってくれてよかったです。ごめんなさい」

    謝るのは俺のほうです。本当にごめんなさい!

    「大塚さんの言葉だけに泣いてしまったんじゃないんです…
     最近別れた彼氏のこと、思い出して…」


    155:2005/11/18(金) 08:44:00 ID:
    彼女がその彼氏のことを話し始めた。
    俺は黙ってその話を聞いた。
    聞くことで俺のしたことが少しでも償えるなら…そんな身勝手な気持ちだった。

    その彼氏とは去年の11月に別れたという。
    理由は彼氏の浮気。
    というよりも、新藤さんと付き合い始めた当初から、同時進行で別の女性がいたらしい。
    結婚を誓い、双方の親にも挨拶を済ませた頃、それが発覚したそうだ。
    責める彼女に対して、彼氏は開き直るばかりか、暴力まで振るったという。

    踏ん切りをつけて彼氏と別れ、気持ちはボロボロになって何もかも嫌になった。
    もう会社も辞めてしまおうかと思った頃、俺が転勤してきた。
    いつも飄々としていて、明るく自分に接してくれる俺の姿に、彼女は救われたという。

    責められるどころか、そんな風に俺のことを話す彼女に、ますます申し訳なく思った。


    156:2005/11/18(金) 08:45:19 ID:
    その後も彼女の話を聞き続けた。
    話しながら彼女は杯を重ね、店が閉店時間を迎える頃には、彼女はヘベレケになっていた。
    俺の酒量もとっくにリミットを越えていたが、とてもじゃないが酔えなかった。

    酔い潰れた彼女を引きずるようにして店を出、タクシーを拾う。
    彼女をタクシーに押し込み、自分は別のタクシーをと思ったが、
    いくらなんでもそれは酷いと思い直し、俺も一緒に乗り込んだ。

    正体をなくした彼女から住所を聞き出すのは骨が折れたが、
    それでもなんとか彼女のマンションまでたどり着くことが出来た。
    しかし揺さぶったりホッペを叩いても彼女は起きない。

    タクシーの運転手が苛立った声で言う。
    「一緒に降りてくれませんか?彼氏でしょう?」

    口論する気力も無かったので、彼女を抱えて降りた。


    157:2005/11/18(金) 08:46:49 ID:
    酔っ払いは重い。
    俺は彼女を背負い、ひぃひぃ言いながらドアの前まで歩いた。
    と、彼女が目を開けた。

    「よかった。もう大丈夫だね?」
    「はい。すみませんでした」
    「じゃ、降ろすよ」

    だが彼女は降りようとしない。

    「どした?まだ立てないかい?」
    「大塚さん」
    「ん?」
    「今日は一緒にいて」

    耳元で囁かれたその言葉にクラクラとした。

    俺は泊まった。


    158:2005/11/18(金) 08:47:43 ID:
    なんともバツの悪い朝を迎えた。

    のそのそとベッドから出た俺に新藤さんが日本茶を差し出した。
    「コーヒーよりこっちのほうが、大塚さん、いいでしょ?」

    笑顔だ。
    なんで笑顔になれるんだ?
    俺は苦笑いすら出来なかった。

    あまりまともに会話も出来ず、俺は帰ろうと身支度を整えた。

    「私も出掛けるので、駅まで一緒に行きましょう」
    早くひとりになりたかったが、俺は何も言えなかった。

    道すがら、彼女が言った。

    「何も考えないでください。私、これきりだと思ってますから」

    彼女はいつもの職場での顔になっていた。


    159:2005/11/18(金) 08:48:47 ID:
    家に帰ると、郵便受けに宅急便の不在票が入っていた。

    芽衣子さんからだ。

    宅配会社に連絡すると、1時間後に荷物が再配達された。
    中には手作りと思しきチョコと、ブランド物のネクタイが入っていた。

    今回は手紙は無かった。
    それが何か無言の圧力に感じた。

    いろんな感情に塗れながら食べたチョコは、味がしなかった。


    160:2005/11/18(金) 08:49:32 ID:
    翌週、職場で会った新藤さんはいたって普通だった。

    ありがたいというか、なんというか。

    自分が卑怯な男に思えたが、俺も努めて平静を装い、彼女に接した。

    以後、彼女は全くあの日のことに触れず、俺も口に出さず、
    ふたりで飲みに行くこともなくなった。


    161:2005/11/18(金) 08:50:39 ID:
    一ヶ月後のホワイト・デー。
    芽衣子さんにお返しを送った。ちょっとだけ値の張る小物入れ。
    メッセージの類は入れなかった。
    何か事務的で、虚しさを感じた。


    162:2005/11/18(金) 08:51:38 ID:
    それから一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月。季節は春を迎えた。

    相変わらず芽衣子さんとのやりとりはない。
    飽きもせず俺は考え続けていた。

    しかも今までは恵子ちゃんや芽衣子さんのことだけだったのに、
    なぜか新藤さんのことまで悩みの数に入れた。

    なんともはや俺という男は小心者で、ナルシストで、くだらない人間なのか。


    163:2005/11/18(金) 08:52:32 ID:
    ある日、同僚と飲みに行った。
    いい加減酔い、終電に飛び乗った時、俺は衝動に駆られた。

    芽衣子さんに電話しよう。

    横浜駅はまだ先だったが俺は途中下車した。
    改札を出てすぐに電話する。
    2、3コールで芽衣子さんが出た。


    164:2005/11/18(金) 08:53:35 ID:
    「お仕事ご苦労様!」

    芽衣子さんの言葉を聞いたらたまらなくなった。
    俺は芽衣子さんが口を挟む隙さえ与えぬほど、捲くし立てた。

    たのむよ!俺の側にいてくれよ!恵子ちゃんのことなんて関係ないだろ!
    忘れたかなんてわかんないよ!忘れたって言ったって信用してくれるのか!
    芽衣子さんが必要だってことだけわかってるんだ!
    嫉妬なんて構わないよ!嬉しいよ!嫌になんて絶対ならない!

    俺の話が終わるのを待って、芽衣子さんが言った。泣いてた。

    「健吾君の気持ちはうれしいの。でも私は、自分が嫌な女になるのが嫌なの!」

    初めて聞く彼女の泣き声に、俺は少し冷静さを取り戻した。

    「一体なんで、そこまでこだわるんだい?」


    165:2005/11/18(金) 08:55:09 ID:
    俺の問いに泣きながら彼女は答えた。

    昔、結婚を考えた彼氏がいたこと。
    でも自分はいつも彼を疑ってしまったこと。
    そしてとうとう、彼は「わずらわしい」と言って去っていったこと。

    自分は病気だと、芽衣子さんは言った。

    俺は胸がいっぱいになった。

    「じゃあ、俺が本当に恵子ちゃんのことを忘れたと、芽衣子さんが確信を
     持てるまで芽衣子さんは待つの?そんなの芽衣子さん次第であって、
     いつになるかわからないじゃない!」

    ほんの少し無言になった後、芽衣子さんが言った。

    「それでも私は待ちたいの」

    ああ、理屈じゃないんだな、と思った。

    堂々巡りに疲れた。もう、いいや。

    俺は電話を切った。


    166:2005/11/18(金) 08:56:05 ID:
    家までのタクシー代は2万円近かった。

    こんなことならカプセルホテルにでも泊まりゃよかった。

    自宅のベッドで横になりながら、
    そんなことを冷静に考える自分を冷たいと思った。


    167:2005/11/18(金) 08:57:17 ID:
    夏。初めて体験する東京の暑さは俺を一層、滅入らせた。

    ある日、出勤すると新藤さんが職場のみんなに挨拶回りをしていた。
    俺の姿を見つけ、彼女が深々と頭を下げる。

    「このたび、会社を辞めることになりまして…」

    俺とのことが原因!? 動揺した。

    「今晩、飲みに行きません?」

    小声で言った彼女は笑顔だった。


    168:2005/11/18(金) 08:58:09 ID:
    その晩、飲み屋に入り席に着いた彼女が、開口一番言った。

    「私の退職は、大塚さんとのことと全く関係ありませんから」

    きっぱりとしていた。

    話を聞いた。
    彼女は彫金を趣味としていたのだが、
    最近、知り合いの彫金師にこれまで作ったアクセサリーを見せたところ、
    強くプロになることを薦められたそうだ。
    でもまだまだ自分は勉強不足だと感じるため、
    会社を辞め、その知り合いのもとで修行をしようと決めたらしい。


    169:2005/11/18(金) 09:00:37 ID:
    生き生きと話す彼女がなんだか羨ましい。

    その時の俺はどういう精神構造をしていたのか。
    こともあろうに俺はとんでもないことを口にした。

    「俺と付き合ってください」

    はぁ?

    そうは彼女は言わなかったが、
    一瞬真顔になった後、すぐに笑顔でこう言った。

    「そんなこと言わないで。
     残酷だけど、私の中では終わったことなんです。
     それって『今更』、ですよ?」

    穴があったら入りたい、なんて言葉じゃ生温い。
    今思い出しても、恥ずかしさで腹の辺りに空洞を感じる。

    自業自得。また俺はひとりになった。


    173:2005/11/18(金) 13:29:20 ID:
    悪いけど芽衣子さんは、本当に腹が立つ!!
    読んでいてこんな気持ちになるんだから、
    当事者の大塚の気持ちを考えるとたまらないな。


    174:2005/11/18(金) 20:40:53 ID:
    芽衣子さんは本当に精神病ではないだろうか?
    そんな芽衣子さんのどこが、1◆はよかったの?


    175:2005/11/19(土) 06:09:41 ID:
    また続きを載せます。
    もう少しお付き合いください。

    >>173
    >>174
    付き合い始めてからクリスマスを迎えるまで、
    彼女にそんな性癖があるなんて思いもしませんでした。
    その頃の彼女は本当に心優しくて、可愛くて、私は大好きでした。
    彼女の極度の嫉妬心が病気といえるレベルだったのかはわかりませんが、
    私次第で解決できると思っていました。
    お気持ち、ありがとうございます。


    176:2005/11/19(土) 06:11:17 ID:
    プライベートがうまくいってないと、仕事までうまくいかないのだろうか。

    毎日なにかしらやらかし、何をしても空回りする日々がしばらく続いた。
    社会に出て10年余、
    どんなに辛いことがあっても仕事に影響するなんてことはなかった。
    それが、色恋沙汰で我を失っている。
    これじゃアカンがなと思う反面、案外俺も普通の人間だったんだなと実感した。


    177:2005/11/19(土) 06:12:45 ID:
    秋になった。
    大きな失敗こそしなくなったが、相変わらず仕事はパッとしない。

    ある日、見かねた先輩が俺を飲みに誘った。

    「どうしたんだ、ここんとこ?何かあったか?」
    「いえ、別に。何もないですよ」
    「そうか?お前はそういうことあんまり話さないからなぁ。彼女と何かあったのか?」

    彼は俺が転勤する際、本社から残務整理の手伝いのために来ていた人だったので、
    俺と芽衣子さんが付き合っていることは知っていた。

    「彼女とは…終わったんですよ」
    「…そか。まぁ、どうせ話さんだろうから深くは聞かんけど」

    そう言って、先輩はそれ以上クドクド説教することはしなかった。

    飲んでいる間、先輩がさりげなく気を遣ってくれているのがよくわかった。

    ありがたかった。
    こんなところで駄目になっちゃだめだ。
    たった1年かそこらで都落ちなんてしてられっか!
    俺は少し前向きになれた。

    そろそろお開きにするかというところで先輩が言った。
    「パーッと合コンでもすっか?俺、セッティングしたる」

    それもいいか。

    「レベル高いの、たのんますよ!(笑)」
    カラ元気で言った。


    178:2005/11/19(土) 06:14:05 ID:
    2週間後、六本木で合コンとなった。

    こちらは先輩と俺、相手はOLふたり。
    とても綺麗な人たちだった。
    丸の内で働いているというふたりはさすがに垢抜けていて、会話も洗練されている。
    話していて楽しかったが、当たり障りのない会話に虚しさも感じた。

    「ダメですよ!故郷のこと、そんな悪く言っちゃ!」

    OLのひとり、関口さんが真剣な顔で言った。

    会話の流れで俺の田舎の話になっていた時だった。
    「○○なんて、いいところに住んでたんですね~」
    「いや、大したトコじゃないですよ。田舎だし」
    「ええ~?都会じゃないですか~」
    「中途半端にね。あんまり面白いところじゃないです」

    横で聞いていた関口さんが俺を叱り付けた。

    場が一瞬凍った。

    「大塚~!関口さんがもっと訛っていいってよ!(笑)」
    先輩、ナイスフォローです。

    また和気藹々とした雰囲気に戻ったが、
    関口さんは恥ずかしそうに俯いていた。


    179:2005/11/19(土) 06:15:35 ID:
    2軒目はどうするかということになった。
    俺は関口さんのさっきの態度が気にかかり、先輩に誘ってもいいかと尋ねた。
    先輩は意外そうな顔をしていたが、
    もうひとりのOLさんを連れてさっさと行ってしまった。

    「もう少し、飲みません?」
    「ええ」

    関口さんを伴い、落ち着いて話せそうな店に入った。

    1軒目よりも静かな会話だったが、お互い打ち解けた感じになった。
    関口さんも
    「こうして落ち着いて話せるほうが好きです」
    と言っていた。

    まったりとした時間を楽しみつつ、俺は気になっていたことを口にした。
    「さっき、俺叱られちゃいましたね、関口さんに(笑)
     なんか悪いコト、言っちゃったかなぁ?」

    彼女が目を丸くした。
    「ごめんなさい!あんな大声出すつもりなかったんですけど…なんか…」
    「なんか?」
    「故郷の話をしてた時の大塚さん、辛そうな顔してた気がして…」


    180:2005/11/19(土) 06:16:46 ID:
    黙って話を聞いた。

    「私はずっと東京で生まれ育ったから故郷がある人の感覚はよくわからないんですけど、
     普通、故郷の悪口を言う人って、それが冗談だったり、口ぶりに愛着が感じられたりして、
     本心で言ってるようには感じられないんです。でもさっきの大塚さんはとても辛そうに見えました」

    真剣に話す関口さんが恵子ちゃんとダブって見えた。

    お互いのメアドを交換し、関口さんと別れた。

    なんだか無性に恵子ちゃんと話したくなった。
    携帯のアドレス帳を開いたが、やっぱりやめた。


    181:2005/11/19(土) 06:18:15 ID:
    俺の気持ちが通じたのか。
    数日後、携帯に恵子ちゃんから電話が入った。

    その日はタイミング悪く夜勤中で、着信に気づいたのは翌日だった。

    電話しようかしまいか夜まで迷った挙句、メールを送った。

    「久しぶり~!元気だった?昨日はごめんよー。夜勤中だったから」
    返信はすぐに来た。
    「ごめんね、突然電話して。夜勤だったんだ。ごめんなさい」
    また送る。
    「どしたん?何かあったのかい?」
    また返信が来る。チャットのようなメールのやりとり。
    「うん。最近落ち込んでて…ちょっと健吾君の声が聞きたかっただけ」

    こんなに弱い感じの恵子ちゃんは初めてだ。
    思い切って電話した。


    182:2005/11/19(土) 06:19:20 ID:
    メールほど暗い声音ではなかったけれど、
    恵子ちゃんが無理して明るく振舞っている感じがした。

    「悩みがあるなら話してみなよ。大したことは言えないだろうけど」
    「ありがとう。あのね…」

    よっぽど我慢していたのだろう。どっと恵子ちゃんの言葉が溢れ出た。

    ずっと仕事のことで悩んでいたこと。
    精神状態が影響したのか、三半規管をおかしくして耳の病気になったこと。
    仕事を続けられなくなり、とうとう会社を辞めてしまったこと。
    お母さんが更年期障害で倒れたこと。
    次の仕事も決まらず、またお母さんのことも考え、
    マンションを引き払って実家に戻ったこと。
    そんな状態だから、次の書展に出す作品も煮詰まってしまっていること。

    気丈に話していたが、言葉は泣いているように感じた。

    俺は通り一遍の慰めしか言えなかったが、
    彼女は何度もありがとうと言ってくれた。声が震えていた。

    「健吾君と飲みに行ってた頃が恋しいよ。
     あれって、私にとって大事な時間だった」

    深い意味は無い。彼女は気弱になってるだけ。

    落ち着きを取り戻した彼女がおやすみと言った。


    183:2005/11/19(土) 06:20:09 ID:
    翌日、俺は開き直った。

    恵子ちゃんと、このままで行けないだろうか。

    もう恵子ちゃんを無理に忘れなきゃいけない理由は何もない。
    俺と彼女の道が交差することは絶対に無いし、そんなことは出来ないけど、
    せめて平行に歩いていくことは許されないか。
    それは辛さを伴うし、
    いつかこの先、もっと大きな辛い結末を迎えるかもしれないけど、
    その時まで、ほんのちょっとでも幸せな気分を味わいたい。
    俺の気持ちさえ誰にも悟られなければ、なんの問題もないはずだ。

    ナルシシズムな考えに、俺の気持ちは軽くなった。


    184:2005/11/19(土) 06:20:57 ID:
    それからは頻繁に電話とメールのやりとりをした。

    決して気持ちを気取られぬよう、細心の注意を払いながら、
    真面目な話、馬鹿な話、楽しい話をした。
    恵子ちゃんも明るさを取り戻してきた。


    【彼女との話】「早く結婚してくれ」 従姉に恋をした。信じられないほど心が痛い。彼女に会ってから今日まで、一年一年、一日一日、その痛みは蓄積されていき、今は極限だと思う

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    引用元:http://love3.2ch.net/test/read.cgi/lovesaloon/1131655290/